論文校正 – 10のコツとは?正しい校正ポイントを押さえよう!

論文校正は論文の本文執筆よりは重要視されていないかもしれませんが、英語論文を著名な国際ジャーナルに投稿して掲載される可能性を高めるためには、論文校正の精度が大きな役割を果たしています。

今回は、論文を効率的に校正して、正確に仕上げるための10のコツを紹介します。
論文校正でお悩みの方は是非参考にしてくださいね。

なぜ論文校正が必要なのか?

なぜ論文校正が必要なのか?

著名な国際ジャーナルへ掲載される論文を作成するには、英語が母国語でない著者も英語で論文を書かなくてはなりません。日本の研究者は論文執筆には熱心に取り組みますが、最終段階である論文校正は重要視していない傾向があります。せっかく素晴らしい研究内容であったとしても、英文の質が原因で認められる機会を逃してしまっているかもしれません。
1つひとつは些細な間違いでも、積み重なることで論文全体としての質が低下し、ジャーナル掲載をリジェクトされる可能性が高くなります。

どんな人でも必ずミスはあります。英語が得意でも母国語ではない言語で執筆しているかぎり、論文校正は必須であるといえるでしょう。

論文校正のコツ10

論文校正のコツ10

効率的に論文校正の作業を進めるには、時間をかけて何度も見返すだけではない「やり方のコツ」があります。
ミスをなくすための校正のポイントを10個紹介します。

①校正の準備をする

論文は一応書き終わっているし、空いた時間に見直せばいい…と先延ばしにしていると締め切り直前に焦って作業することになりかねません。あらかじめ計画を立てて、スケジュールは前倒しで進めていくことがミスをなくすポイントです。
校正前に準備しておきたい項目は次の3つです。

校正の優先順位を決める

 

校正作業に入るまえに、英語論文に関する自分の弱点をまとめておきましょう。
文法でいつも同じ間違いをしてしまう、スペリングを覚えにくい単語があるなど、自分の苦手部分から優先的に着手する校正リストを作成します。
リストに沿って進めていけば効率的に作業できます。

校正スケジュールを決める

 

校正作業終了日は、実際の締め切り日の3営業日前くらいまでに設定しましょう。
校正作業がすべて終了したあとに図表のずれなど体裁を修正することも有り得るので、
終了予定日は余裕をもって設定しておきます。

最終確認として、職場の上長に見てもらいたい場合は当人のスケジュールを確認し、事前に時間を確保してもらう必要があります。

論文に使用した元データを用意する

論文に画像やグラフ、表などを貼り付けている場合、パソコンに元になるデータが保管されています。最終版に至るまで撮り直しや、作り直しを繰り返している場合もあるでしょう。
校正作業に入るまえに最新版のデータがすぐに確認できるように1つのフォルダにまとめておきましょう。

②構造が論理的であるか?

まず全体を通して見直しを行い、目標とするジャーナルに要求されている必須項目のすべて(序論、実験方法、結果、考察など)が論文に含まれているか確認します。
次の項目をチェックしておきましょう。

  • 研究背景が記述されているか
  • 現在進行中の研究と先行研究に対する情報が含まれているか
  • おもな実験方法と実験道具について説明が足りているか
  • 研究結果に着目した著者の考察になっているか
  • 研究結果は実験方法のプロセスに沿った順番で記述されているか
  • 読者にとってわかりやすい「主張」と「結論」になっているか
  • 内容の追加、消去、配置換えによりさらに明確に表現できる部分はないか
  • 参考文献の選定はよく検討して行ったか

③正しい書式になっているか?

論文原稿のレイアウトや書式については、ジャーナルの指示を事前に確認しましょう。出版社によっては、ジャーナルに載せる論文の品質に対する高い基準を設定しており、具体的なテンプレートが用意されているところもありますが、基本事項の説明文が記載されているだけのところもあります。

書式のチェック

どんなに内容が優れていても、正しい書式で構成されていなければ見た目で印象が悪くなります。論文全体としてスタイルが整っていると「見栄え」が良くなり読みやすさが向上します。
次の項目をチェックしておきましょう。

  • 段落は適切にわけられているか
  • 大見出し、小見出しの位置は適切で、スタイルが統一されているか
  • フォントの種類と文字サイズが統一されているか
  • 図表のレイアウトが統一されているか
  • 図表番号が目次と一致しているか
  • 図表下のキャプションと本文中の説明が一致しているか

実験結果などを示す図表の多い論文の場合、差し替えなどで図表番号や見出しの項番が変わってくる場合があります。レイアウトのずれや文章との不一致が起こりやすいのでよく確認しましょう。

参考文献表記のチェック

英語の論文には論文の書き方に全般的なガイドラインが作成されています。
該当するジャーナルから指定されているスタイル形式で正しく参考文献を表記しているかを確認しましょう。
次のような世界中で普及している標準スタイルがあります。

  • APAスタイル:アメリカ心理学会(American Psychological Association)によるスタイルで社会科学分野(心理学、社会学など)を対象とする
  • AMAスタイル:米国医師会(American Medical Association)によるスタイルで自然科学分野(医学など)を対象とする
  • MLAスタイル:米国現代語学文学協会(Modern Language Association)によるスタイルで人文科学分野(文学、言語学など)を対象とする

※分野によっては独自のスタイルが用いられる場合もあります。

④一貫性があるか?

論文作成は数カ月にわたる長い期間で長文を書き上げる作業なので、表記やスタイルに「ゆれ」が生じる可能性があります。ジャーナルのスタイルとガイドラインに一致する方式で、主張と論拠、用語とスペリング、句読点などにおいて全体的に一貫性が保たれているかを確認しましょう。
次の項目をチェックしておきましょう。

  • 大文字小文字の区別
  • 使用する単語や語調が一貫しているか
  • 関連団体など固有名詞の略称とフルスペルは一貫しているか
  • 同じような内容の文章を繰り返して記述していないか
  • 能動態と受動態の使い分けが正しくできているか
  • 過去形と現在形の使い分けが正しくできているか
  • 冠詞(a,an) 定冠詞(the)は正しく使われているか
  • 単数形、複数形は正しく表現されているか
  • イギリス英語、アメリカ英語は統一されているか

⑤Wordの機能で校正を行う

いちばん簡単に校正を行う手段として、Microsoft Wordの校正機能があります。
ツールの「校閲」から「スペルチェックと文章校正」を実行します。
文法、句読点、スペリング、余分なスペースなどの一般的なミスなら十分に発見することができます。同じ単語なら検索機能から一括で修正することも可能です。

⑥音読してミスをあぶり出す

論文を声に出して読むことで、黙読では気がつかなかったミスを発見することができます。とくに、自然で読みやすいかどうかは音読するとわかりやすいです。

研究に関する専門用語はすべて正しく使用することが求められます。不正確な用語があると学術用語の使用に関して注意が行き届いていないと判断されてしまいます。
次の項目をチェックしながら音読してみましょう。

  • 文法やスペリングは正しいか
  • 文章の構成は正しいか
  • 適切な語彙が使用されているか
  • 適切な表現で書かれているか
  • 自然な文章になっているか
  • 読みやすい文章になっているか

音読して発見できるミスの例を1つ紹介します。化合物の化学式が並ぶ化学分析に関する論文などで、硫酸の化学式は H2SO4 であるのに、H2SO と「4」が抜けている場合があります。目視だけだと読み流してしまいますが「エッチツーエスオーフォー」と発音すれば抜けていることに気がつきます。
化学分析20年のベテラン研究者でも、キーボード操作のミスでうっかり消してしまうことはあるでしょう。研究者としての資質とは別の問題ですが、小さなミスでも数が多いと信頼性を低下させる要因となります。

⑦印刷して見直しを行う

パソコンの画面上で複数回見直しを行っても、内容が記憶されてしまっているのですらすらと読めてしまいます。印刷すると「他人が書いたもの」として客観的に見ることができるので、ミスをみつけやすくなります。

最近は印刷すること自体が少なくなっていますが、アナログならではの利点もあります。紙媒体でミスを手書きでチェックしていき、文法関係は青、スペルミスは赤などで色付けしていきます。手を動かしながら色のイメージとともに記憶に定着させることで、同じ間違いを繰り返さないようになります。
紙媒体なら小分けにすればかさばらず、PCを持ち込めない場所でも見直しができます。環境を変えると新たな視点で論文を読むことができます。

⑧倫理に関するチェックを行う

論文に倫理違反が発覚した場合は、故意ではなかったとしてもペナルティを受け、論文のリジェクトにつながります。自分自身と原稿を守るためには以下のような倫理に関するチェックを行いましょう。

剽窃* 掲載したすべての資料の引用を確認する。(自分の過去の出版も含む)引用した場合は適切に引用符を使用し、出典が明記されているか確認する。
同時投稿 論文は一度に1つのジャーナルにのみ投稿できる。取り下げが承認されればほかのジャーナルに投稿できる。
二重出版 すでに日本語でほかのジャーナルから出版されている場合などは、出版済みのジャーナルとこれから投稿するジャーナルそれぞれの許可を得る必要がある。

*剽窃(ひょうせつ):他人の文章などの文句または説をぬすみ取って、自分のものとして発表すること。(広辞苑 第七版より)

⑨カバーレター作成

論文を提出する際にはカバーレターが必要になりますが、「提出する時に書けばいい」と論文作成作業のいちばん最後にされていることが多いです。
論文投稿に慣れていない人の場合は、カバーレター作成に予想外に時間がかかることもあります。校正作業がすべて終わってから書き始めたのでは、予定していた作業終了日に完了できなくなってしまうかもしれません。
カバーレター作成も校正作業に組み込んで並行して進め、最終日には提出できる状態になっていることを目指しましょう。

⑩作業は分割して行う

論文校正作業は確認項目が多く、細かい作業の連続です。一気にまとめて進めてしまうと途中で疲れて集中力が低下し、些細なミスを見逃しやすくなります。
以下のように自分の集中力を保てる分量を維持して自分に合ったやり方で進めましょう。

  • 項目ごとに別の日に校正を行う
  • 論文をいくつかに分割して、1部ずつ校正作業を行う
  • 校正作業の時間枠を決め、時間外にはやらない
  • 校正作業を休む日を設けて毎日はやらない

時間をおいてから見直したほうが「うっかりミス」をみつけやすくなります。

以上、紹介した10のコツを論文校正作業に取り入れてミスのない完璧な論文に仕上げていきましょう!

論文校正は実績豊富な翻訳会社にご相談ください

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今回ご紹介したとおり、自分でできる最大限の論文校正を行うことで論文の精度を上げていくことができます。

さらに専門的な英文校正サービスを利用すると、分野別に専門知識を持ったプロの校正者による入念な校正を受けることにより、論文を著しく改善させることができます。著者が校正者に修正された内容を見直すことで、著者自身の文章作成能力と校正能力を向上させることも可能です。

FUKUDAIの論文翻訳サービスでは、学術業界での豊富な経験を持つ翻訳者が多数在籍しております。研究者の皆様それぞれの専門分野に熟練した翻訳者や校正者が担当いたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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